図書館見学 矢祭もったいない図書館

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(矢祭もったいない図書館 〒963-5118 福島県東白川郡矢祭町東舘石田25)

 

先週,矢祭もったいない図書館に行ってきました。この日は突然訪問したのですが,写真撮影の許可をいただこうとお尋ねしたところ,なんと職員の方にご案内いただきました。ありがとうございました。視察する場合には事前申し込みも受け付けているようです*1

 

私は車で訪問したのですが,この図書館は駅からも近くJR水郡線東館駅から徒歩1分*2です。車では,駅を目指して行って駅の目の前の道を左折すれば図書館が見えてきます。公民館と併設なのでかなり大きな建物です。

中に入ると公民館の受付と下駄箱があり,そこでスリッパに履き替えます。スリッパは備え付けのものを貸して下さいます。

 

入口を入って右手が図書館ですのでズズッと廊下を行くと防火扉にこんな素敵なサインがありました。もちろんいつもは開いた状態ですが,ご厚意で撮影のために閉めていただきました。

 

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柳田邦男先生は,矢祭もったいない図書館が主催している手作り絵本コンクール*3で審査員をされているそうです。

手作り絵本コンクールは,今年で7回を迎えられるそうで,毎年全国からたくさんの応募があるそうです。一般の部と家族の部があり,それぞれ最優秀になった作品は書籍化してくださり,作者にはもちろんのこと,蔵書として矢祭もったいない図書館と作者のお住まいの公立図書館へ寄贈されます*4

特に内容については制限がなく,海外からの応募やパッチワークの布絵本を応募された方もおられるそうです。いくつか最優秀作品を拝見すると,どの作品もとても暖かみがあり,それでいてしっかりした内容で,とても素人とは思えないものばかりでした。なかにはいくつか絵本作家を志している方からの応募もあるそうです。

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「矢祭子ども司書」講座*5という児童向けの読書推進活動もされていて,全15回からなる大変しっかりしたカリキュラムの講座を毎年されています。子ども司書として認定された児童は,認定証をもらい名前が図書館の壁に掲げられ,「子どもサポーター」として図書館行事に参加できるそうです。職場体験や1日子ども司書といった活動は多く見られるものの,きちんとカリキュラムを組まれていることに感銘を受けました。

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子どもサポーターが参加する図書館行事として,「家読(うちどく)祭り」があります。「家読祭り」は,家で読書をしましょうという読書推進活動の一環で,家で読むための「うちどく福袋」の貸出や,手作り絵本コンクールの展示がされていて,コンクールの絵本を使ってお話し会が開催されています。

お話し会をするのが子どもサポーターのみなさんです。普段はご両親や大人に読み聞かせされている側の子どもが,この日は逆に読み聞かせをする側になれる日というわけです。

今月14日に「家読まつり」が開催されるということで,もしお近くの方いらっしゃったらぜひ行かれてみてはいかがでしょうか。以下は「うちどく福袋」の中身の一例です*6

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さて,矢祭もったいない図書館の名前に,なぜ「もったいない」が入っているのかについて,書きたいと思います。矢祭もったいない図書館は,全国から図書の寄贈を募り,寄贈本のみで蔵書を構成するという試みによってつくられた図書館です。この町立図書館は,町の総合計画による町民アンケートの結果,町立図書館の設置が大多数寄せられたために開館されました*7

寄贈本は,職員さんによると3万冊程度集まれば…と考えられていたそうですが,予想を大きく上回る45万7000冊が寄贈され,現在も継続して寄贈があるそうです*8。ちなみに図書の寄贈者の名前も図書館に掲げられていました。

 

さて,ここで私が訪問する前から疑問だったこと,寄贈本だけで蔵書構成に偏りはでないのかとうかがったところ,思ったより出ないとのことでした。館内をぐるっと見学させていだきましたが,開架部分だけでも小説,実用書,児童書,辞典類と豊富に揃っているように思いました。以下の写真は入口正面にある新刊書の棚です。ちなみにこの隣にも机があり十数冊が展示してありました。手にとって何冊か拝見しましたが,古本のようには見えませんでした。最近は,刊行から三年以内の本の寄贈を受け入れているそうです。

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この他,ご厚意で書庫も見せていただきました。全集や大きな美術書等はこちらにおかれているそうで,この隣の2階建ての建物にも電動式書架がびっちりありました。寄贈された本は開架だけでなく,閉架書庫と町の公民館図書室や郵便局にも置かれているそうです。

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全集や美術書も寄贈というのにも大変驚きました。なんでも昔付き合いで買わされた方やご家族の遺品で所蔵していた方が「図書館に所蔵してくれるなら…」ということで寄贈していただいたそうです。

 

職員さんによると,寄贈で図書館を作るなどとんでもない!というお叱りの電話を何度ももらったそうですが,こんなにも豊富な蔵書になると誰が予想できたでしょうか?

45万冊にもなる寄贈本の装備は町民のみなさんがボランティアをして手伝ってくださったそうです。町民のかたの5人に1人は図書館ボランティアをしてくれたそうです。新書も豊富でした。

 

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矢祭もったいない図書館が成功した理由として,
・町民によるボランティアの協力があったこと
・矢祭町が以前新聞で取り上げられていた等のネームバリューがあったこと
・書庫を持つことのできるスペース(駐車場があった場所を一部書庫にした)があったこと

を挙げておられました。開館当初はたしかにそうかもしれませんが,現在も継続して寄贈があるのは,職員のみなさんの情熱あってこそと思いました。

*1:

矢祭もったいない図書館|各種資料ダウンロード

*2:

矢祭もったいない図書館|施設案内|周辺地図・アクセス

*3:

矢祭もったいない図書館 - 第7回矢祭町「もったいない図書館」手づくり絵本コンクール

*4:残念ながら第一回の作品以外は買うことが出来ません

*5:

矢祭もったいない図書館|矢祭子ども司書

*6:主に児童向けに年代別になっていました。貸し出す本の他に雑誌付録やお菓子のおまけが付いていて本当に福袋みたいです。これが30袋くらいあって,例年全て貸し出されるそうです。

*7:

「もったいない図書館」開館(福島県矢祭町) | カレントアウェアネス・ポータル

当該記事に記載されている新聞記事等はリンク切れ

*8:

詳しくはこちらの記事を読んでいただくほうがわかりやすい。全国各地から寄贈された45万冊を住民だけで運営 「矢祭もったいない図書館」が映す地方創生の光|相川俊英の地方自治“腰砕け”通信記|ダイヤモンド・オンライン