アイヌ文化とゴールデンカムイ

みなさんは、ゴールデンカムイをご存知でしょうか。大英博物館では、いまマンガ展が開催されており、図録やポスターにはゴールデンカムイの主人公が載っています。

The Citi exhibition

Manga マンガ
23 May – 26 August 2019

#MangaExhibition

https://www.britishmuseum.org/whats_on/exhibitions/manga.aspx

youtu.be


マンガは、公立図書館では収集対象としていない場合があり、資料として所蔵されていないものが多くあります。もちろん、ご承知のとおり国立国会図書館には所蔵されており、公立図書館では地域出身のマンガ作家のタイトルは所蔵している場合はあります。
ただ、まだまだ収集すべき対象としては認識されていないのが現状です。

マンガは、マンガ展のウェブサイトにもあるとおり、日本文化のなかでは浮世絵にルーツがあり、独自に発展してきたものです。また、物語りを読むことで、主人公の体験をあたかも追体験したかのように感じたり知識を得たりするのは、文芸作品と共通しています。そのため、日本文化や教育教材の一つとして再評価される向きがあります。


またマンガをきっかけに、舞台となった場所や主人公にまつわるものを体験したり、作家の出身地を訪れたり、いわゆる聖地巡礼が話題になっています。自治体や地域の商工会議所も町おこしに力を入れるため、聖地巡礼を盛り上げる取り組みをしています。これは全国各地で拡がっています。

ゴールデンカムイでは、北海道が舞台で、主人公はアイヌの女の子です。そのため、北海道を舞台にしたゴールデンカムイスタンプラリーが実施されています。北海道の各地にある博物館やゴールデンカムイにまつわる場所で、キャラクターの限定AR画像が入手でき、現地でキャラクターと撮影し共有する仕組みを作ったのです。

f:id:redmm:20190820202112j:plain

博物館網走監獄にてスマートフォンアプリを使用したAR画像



これまで、私はゴールデンカムイが話題になっていることは知っていたものの、読んだことはありませんでした。アニメにもなっているようだったので、視聴したところ、アイヌ文化についてかなり詳細に描かれていました。

例えば、アイヌ文化は狩猟採集社会でした。ただ、アイヌの人々はヒグマを狩って食べるだけでなく、それらは動物それぞれの神さまからの贈り物であり、食べる際にはその神さまに感謝の祈りを捧げるという描写や、北海道の開拓民からはアイヌの人々は差別的な扱いを受けているという描写がありました。
また、マンガの単行本の巻末には参考にした文献一覧が記載されていました。
 
実際に、弟子屈町屈斜路コタンアイヌ民俗資料館や北海道立北方博物館を訪れてみると、きちんとした調査に基づいて描かれたマンガであることがよく分かりました。

細かなところでは少年漫画的な描写はあるものの、大きなテーマとして、アイヌ文化への理解を深めるものとして大きく貢献していると感じました。

この町おこしに、という流れはマンガだけにとどまりません。
先日、文部科学省で開催された全国博物館長会議に出席したところ、徳川美術館が事例発表されていました。
刀剣乱舞というスマホアプリのゲームで、擬人化された日本刀がキャラクター化され、所蔵している日本刀が出ていたために、これまでの入館者数が倍以上になったということでした。
現在、日本各地の博物館で日本刀の展示があるのは、刀剣乱舞のゲームのブームによるもののようです。
徳川美術館では、ブームを一過性のものにしないためにSNSの活用やファンを増やす活動を行っているそうです。

翻って図書館で収集する資料としてマンガについて考えてみると、どのマンガを収集すべきか、選書基準はどうするのかなど、まだまだ課題は多くあります。
選書基準は、それぞれの図書館が検討して策定すべきものであり、唯一の正解があるものではありません。
お近くの図書館ではどのようなマンガが所蔵されているか、あるいは全くされていないかを見てみると、図書館サービスについて理解が深まるかもしれません。