東京国際ブックフェア行ってきました。

とは言っても、つくばで予定があったので、シンポジウムに参加してブックフェア会場には行けませんでした。私が行ったシンポジウムは、書店・出版社・図書館の三者がパネルディスカッションを行うもので、東京国際ブックフェアならではかなと思い参加申込いたしました。

 

以下、シンポジウムの記録を掲載いたします。

ただし、この記録はredmmが理解できた・聞き取れた範囲のものですので、発言者の本来の意図とは異なっている場合がある点についてご了承いただければと思います。

 

東京国際ブックフェア2014

図書館・出版シンポジウム「図書館・出版、変わりゆくコミュニティの中で」

 

パネラー;
古瀬氏(伊万里市民図書館館長)
福嶋氏(ジュンク堂書店難波支店店長)
平尾氏(文藝春秋前社長)
コーディネータ;
齋藤氏(元鳥取県立図書館館長)

 

あいさつ
持谷氏(みすず書房社長)
・どのような協働を図っていく可能なのかを議論していきたい
・シンポジウムの共同開催も協働の一つと考えていただきたい
・登壇者紹介

 

パネルディスカッション

古瀬氏
伊万里市市民図書館の紹介
→市民生活に役に立つ図書館を目指している。最近はICの基板で栄えている。
→昨年は見学が900名。「つながる図書館」の影響ではないか。
→図書館のミッションをはっきり打ち出す。20年前に市民と一緒に図書館整備を進めていった。
→図書館づくりを進める会で、意見を募った。公開講座年間8回。図面を市民に見せながら理解を求めた。
→ひとづくり、まちづくり、市民のための図書館をはっきりさせた。
→「子どもが本を読まない町に未来はない」
→「書斎がほしい」会社を起こした人2名、本を出版した人1名。
→市民へのPRを徹底した。起工式をみんなでお祝いしてぜんざいをふるまった。いまも行っている。
→棟上げした際に市民に見学をしてもらった。平成7年7月7日に開館。これまで市立だったが市民になった。
→平成6年に市民と一緒にアメリカへ視察に行った。図書館友の会をみて「あれをやりたい」となった。いまもその活動が続いている。
→図書館内の施設を使ってバザールやフラダンス等をやっている。企画は市民がしている。

 

・子どもが本を読まない町に未来はない
→韓国、中国でICTが進んでいるが、読書推進活動も盛んである。
図書館記念日に子どもたちに自分で貸出体験等をしてもらって、図書館に親しんでもらおうとしている。
→家読。市民手作りのパーティでみんなで交流して楽しんでいる。フォトコンテスト。CD「こころつないで」。
→ビジネス支援も大事だが、基本は子どもたちが本を読むことだと思っている。
ブックスタートをはじめたが、比較的始めたのは遅い。ボランティア3名に手伝ってもらっている。
→市長が来て家読の先頭に立ってやってもらっている。
→甲子園のパブリックビューイング

 

・ビジネス支援
→「未来をつくる図書館」課題解決型の図書館にしたかった。第一回「図書館で実現しましたコンテスト」洞爺湖サミットの筆。
→図書館で特許を4つとった人がいる。
→焼き物だけでなく、エネルギー関連の本も収集していたために特許関連で起業した人が出てきたと思っている。

 

・企画展示
→月に1回
→古賀幸恵「場としての図書館」の報告書
→貸出されるもんだけでなく、市民の役に立つ本を選書していきたい。

 

福嶋氏
・自己紹介
→図書館には個人的にお世話になっている。あくまで個人の意見として考えていただきたい。
→図書館と書店は違う。なぜ図書館があるか、知る権利があるからである。なぜ書店があるか、本を売るためである。
→図書館:政治と書店:経済を担っている。
→本が並んでいる風景は似ている。扱っているものは「紙の本」である。
→書店の売上は20年近く右肩下がりである。本を読む人が減ったのかもしれない。今回はそれには触れられないが、ICT技術の発展が原因かもしれない。
→本を読むことは大事だと主張していきたい。なぜ必要か。「言論の自由などない」報道の自由が抑制されている。
→本を読むことで他人の考えを理解するのではなく、自分の考えを理解していく。本を読むことが民主主義を支えていると思う。
→若者が読まないというが、大人も読まないのではないか。上の世代をみて、「本を読まないと」と思うようであった、そうなっていないのではないか。
→上の世代が本を読んでいるさまをみせるのは図書館が最適な場所ではないか。
→図書館と書店で協力していきたい。図書館の本は古い。書店の本は新しい。時間軸の違いがある。
→歴史事件の展示をしたかったが、書店には本がほとんどなかった。図書館がうらやましい。

 

平尾氏
・福嶋の話をうけて。
→「アンネの日記」の性に関する記述は両親によって削除されていた。いまは削除されていない完全版が出ている。「ひかりほのかに」(削除済み)「アンネの日記」(削除されていない)
→「夜と霧アウシュビッツの写真がある版、ない版、図書館には全ての版がある。
→図書館は「無料貸本屋」の批判があるが、それはあり方が批判されているのであって、無料であることが批判されているわけではない。

 

・複本問題
→人気作家の大量購入について、ペンクラブ、日本推理作家協会、貸出猶予の要望をNLAに出した。それが拒否された。
→出版文化の根幹に関わる問題て、出版の文化の根を枯らすことになる。
→文藝出版はごく少数のベストセラーの利益によって、売れない作家の本を出版している。
芥川賞直木賞にはコストがかかっている。作家先生に選考を引き受けてもらっている。
→重版の点数は10%程度である。

 

・文庫
→できれば図書館にいれてもらいたくない。複本問題と同じ。
→単行本全体の利益を支えているのが文庫の利益。

 

齋藤氏
鳥取県立図書館について
→2002年に図書館長就任し、3年間ついた。その後はサポートをしている。
→「自己責任社会」自分で判断する情報を提供するのが図書館。
→だれでも情報弱者になりうる。ある日法律問題にぶちあたるかもしれない。そこを支えるのは地方にあっては図書館である。
→地方は高齢化、人口減少だが、図書館はぼーっとしていられない。資料費が切られてしまう。迎え撃つ準備ができているか、お寒い状況である。
→病院内図書室に11時までに注文があれば明日届けられる。そういったことを鳥取県立図書館がしている。
→全点案内の本を購入し、選書の参考のために蔵書している。
→地域の中での団体と情報提供をしていく、図書館がいままで避けてきた情報(ビジネス支援、医療情報)を出すようにしている。
→子どもが本を~があったが、国に未来はないのだと思う。自分の体験を子どもにさせるのが大事である。
→今年から学校支援員を置いた。学校の中の読書活動をサポートしている。
→行政職員への情報活用の研修。司書が中心となって行っている。
→書店と図書館の協働。今井書店の永井さん。地方出版文化を応援している「ブックインとっとり」
→地方では、少し固い本を県立図書館が購入しないと、配本されなくなってしまう。そこを支えている。

 

ディスカッション
・平尾さんの複本について古瀬さんコメントお願いします。
古瀬
→「誰が本を殺すのか」、図書館は貸出至上主義がながかった。地方では複本はあまりない。都会だけではないか。地方は資料費が潤沢ではない。
→公貸権、ずぼん「図書館はどのような本を所蔵しているか」2003年の調査。図書館はまんべんなく所蔵している。
→図書館がうまくやっていない、反省すべき点である。
・それを受けて平尾さん、どうか。
平尾
→子どもが本を~のくだり。DVは遺伝する。これの逆ではないだろうか。親が読むと子どもが読む。
→子供の頃に絵本を読むとやはり本をよむようになる。小さい頃に読み聞かせが大事。
→「つながる図書館」ちくま新書、本当に行きたくなる。図書館の現在がよくわかる。
古瀬
→文庫の複本について。文庫の文字が大きくなったので、お年寄りが多く読むようになった。
齋藤
→地方はあんまりないということだった。県立は文庫はないので門外漢であるが、新たな読者層を作る可能性もある。
→出版社に対して配慮が必要である。少しは出版社も許してほしい。
→若者は単行本の書架にあまり行かない。核の場所は文庫・新書である。
・こどものアピールという点で、書店ではどうか。
福嶋
→買うのは大人である。街の本屋がなくなったので、本に触れる機会がなくなったのではないか。
→親の価値観と子どもの読みたい本は違う。よく子どもに読ませたい本フェアがあるが、逆に読ませなくないと並べたほうが読むのではないか。
→様々な年代のひとがきて、それをみて子どもが読みたくなるのではないか。コミュニティの中での書店。
ブックスタート、ブックセカンドなどというが、自治体は頑張っている。
齋藤
→大人が無理に押し付けると読まなくなってしまうのではないか。
福島
→作家に子どもたちと一緒に絵を書いてもらった。それはすごく好評であった。

・お互いの業界について知ってもらうことが大事なのではないか。
齋藤
→協働のイベントパックが出来るのではないか。
 本、小物、作家、本についてのエピソードを話してもらう。18歳以下のこどもたちにインパクトがある。
 単純なサイン会ではなく、講演会や小物をみてみたい。
平尾
→ビジネスと文化の両立が出版社の至上命題。いまの話は文化に傾いている。無償は難しい。
→本の販売ができればOK。ビジネスが成り立つのであればいける。
齋藤
→書店が入れば販売も可能である。
福嶋
→作家の講演会を図書館にあるホールを貸してくれと言ったら貸してもらえた。200名が集まって行った。
→人を本にひきつける力があると思った。図書館に200名きたが売ったのは50冊、書店では30名でほとんど販売した。
→図書館は借りに行くところ、書店は本を買いに行くところで場所の持っている力があるのだと思った。
齋藤
ノーギャラでなくて良いと思う。図書館ではどうだろう。
古瀬
→みんなが協力していくのは素敵なことである。図書館には予算がつかないが、外郭団体の予算で学校に作家を読んで講演会をやった。すごく好評だった。
→すばらしい、書店と共同していきたい。
齋藤
→文藝だけでなく、健康系でもいけるのではないか。
→いまの話を聞いて出版関係の方、行けると思った、協力してもよいと思った方挙手をお願いします。
→半分くらいはOKのようだ。
鳥取県立は報道に取り上げてもらうことに力を入れている。出版や書店が図書館について発信してもらうことで底上げはできる。
平野
→橋渡しはできる、作家は協力的である。
齋藤
→学校であれば上級生が本を読む姿をみることができる。スマホが台頭している、本に引戻したい。
→本に引き戻す力は作家からの発信が、影響力は大きいと思う。特に地方では。

 

最後に
平尾
→キーワードは編集力である。編集力の質が違う。
→「選択の科学」、選択肢が多いと消費者は萎縮してしまう。本の場合も点数が多いとそうなのではないか。とにかく本の洪水である。
→図書館も編集力が必要である。書店も編集力である。平台や棚に並べる本。
→書店によって編集力が違う。出版社の売り出し方も編集力である。
→図書館は無料貸本屋かもしれないが、それは編集力が問われているのではないか。
福嶋
→書店はいわゆる委託配本で売っている。売れなければ返本できるが、図書館はそうはいかない。
→図書館は書店に来てほしい。書店員に聞いてほしい。日常的な交流が遠回りに見えて近道なのではないか。現場レベルから突き上げてほしい。
→本を売る、本を貸すことにこだわりたい。書物は読むにあたいするものであると、自信を持って伝えていきたい。それが最終的な目的であると自覚することが生き延びていくすべである。鈴木邦男「本のレコメンドはいらない。『こんな本ばかり読んでないでこっちもよんでみたら』というのが必要ではないか。」
古瀬
→読まない脳は劣化する。老人施設でテレビが入ったら途端に
夏目漱石「理想は、見識よりいづる。見識は学問よりいづる。」
齋藤
まとめはしない。

 

感想:

このテーマを扱うにはもう少し時間がほしかったなと思いました。コーディネータの齋藤氏が図書館の方なので、少し図書館の話が多くなってしまったように感じましたが、最後のイベントをパッケージ化して書店と出版社と連携する、というのは良いアイディアだと思いました。

また、平尾氏の複本についての話の中で、反論として、地方では図書館が購入しなければ配本されなくなってしまう、という主張は初めて聞きました。図書館に購入されることで支えられている雑誌や図書がある、というのは知っていましたが、配本されなくなってしまう、というところまで考えているとは思いませんでした。