査読論文をオープンアクセスにする
先日、論文が載録されたので機関リポジトリでオープンアクセスにしようと思い、手続きを行っています。オープンアクセスというとピンとこない人もいると思いますので、簡単に解説して手続きについてもメモ代わりに記事を書きたいと思います。
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オープンアクセスとはなにか
オープンアクセス(以下、OA)とは、
学術論文や学術雑誌の掲載記事が、インターネットを通じて誰でも自由に閲覧できること。
コトバンクより引用
であり、通常は有料で購入されている学術雑誌を無料で閲覧できるようにしましょうという考え方や、状態を表す言葉です。
背景としては、学術雑誌は代替がしにくいものであるため、市場原理が働かず特定の出版社による独占状態によって値段の高騰が原因として挙げられます*1。値段が高ければ限られた一部の人しか研究成果を閲覧することができません。そこで、無料で誰でも自由に閲覧できるようにしましょうという考えが生まれました。
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OAの方法
では実際にOAしようと思った時には、どのような方法があるのでしょうか。その方法は以下の2点に分けられます。
OA を実現する方法はふたつある。グリーン OA とゴールド OA である。前者は、著者が自身の HP や所属する学術・研究機関のリポジトリなどで論文のアクセプト原稿を公開するという方法、後者は査読つき OA ジャーナルで論文を出版するという方法である。
まとめると、グリーンOAは自分で公開、ゴールドOAは雑誌がOA*2ということです。今回はグリーンOAのなかでも所属機関のリポジトリで公開する方法について書きます。
大学等の所属機関のリポジトリを特に機関リポジトリといいます。現在は学術雑誌の多くが有料で公開されているため、まずは機関リポジトリについて書き、次に有料の学術雑誌を機関リポジトリでOAにするための注意点等について書きます。
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機関リポジトリとはなにか
機関リポジトリとは、主に大学が提供している論文やデータを公開するためのポータルサイトのことです。代表例としては、以下の機関リポジトリが挙げられます。
その他、コンソーシアムを組んで機関リポジトリを運営している大学など様々あります。上記の機関リポジトリをいくつか見てもらうとわかりますが、機関リポジトリに掲載されているのは、論文だけではなく博士論文やデータ、図書等も含まれています。
大学であれば半永久的に存在する機関であり、論文等のデータも半永久的に公開し続けられるであろうこと、掲載されている論文等にウィルスが含まれていないであろうことがメリットとして挙げられます*3。今回は私が大学に所属していることもあり、機関リポジトリによるOAを選びました*4。
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OAの注意点
ではOAにあたっては何に注意する必要があるのでしょうか。それは著作権の帰属問題です。著作物の原則は、著作者(筆者)に著作権があるのが通常ですが、学術論文ではそうではない場合があります。
本誌に掲載されるすべての論文等の著作権は本学
会に帰属する。
ただし,著者は自分の論文等を複製,翻訳,翻
案等の形で利用することができる。論文等の全部
あるいは大部分を他の著作物(ウェブページへの
掲載を含む)に利用する場合は,その旨を編集委
員会に申し出ると共に,出典を明記する。
日本図書館情報学会投稿規定より引用
論文の著作権に関して、それぞれの学会がどのように定めているのかを知るための手段として、学協会著作権ポリシーデータベース(以下、SCPJ)があります。例えば、日本図書館情報学会の情報を見てみると、以下のように定められています。
出版社版の利用;
出版社版を利用可能です
公開場所;
著作者個人のWebサイト
機関リポジトリ
公開条件;
出典表示を行うこと
猶予期間を遵守すること (5年)
事前に照会を行うこと
出版社版の使用は刊行後5年経過後
刊行後5年以内は,著者版のみ使用可
NII-ELSの画像を使用する際は、次のメタデータを記述してください。
http://scpj.tulips.tsukuba.ac.jp/info/nii.html
SCPJより 一部抜粋
以上より、日本図書館情報学会では、事前に照会を行えば機関リポジトリへの登録が認められていることがわかります。
次回記事は実際の手続きについて書きます。