第21回図書館総合展「公・大連携の新しい形―箕面市と大阪大学の挑戦―」フォーラム参加記録

 

※本記録は、redが聞き取れた、理解できた範囲のものですので聞き間違いや理解間違いが含まれる可能性があります。そのうえでご覧ください。

 

 

11/12/19 10:00-11:30 第3会場

登壇者:

大阪大学総長 西尾章治郎氏

箕面市市長 倉田哲郎氏

司会:

ARG 岡本真氏

 

  • ARG 岡本真氏

指定管理者制度で指定管理料をとるビジネスモデルは古い

大阪大学は指定管理料をとっていないが、経済性の発揮は行う

 

大阪大学は江戸中期の懐徳堂(大阪商人発の学び舎)、適塾緒方洪庵の学び舎)に源流がある

・2007年大阪外国語大学と統合された

・国立大学であるが民間に源流がある

・「地域に生き世界に伸びる」がモットー。地域に貢献するため箕面市と協定をむすぶ

・新しいキャンパス(箕面、茨木、吹田、新箕面)を介した地域との連携を目指す

・25言語の授業(大阪外国語大学併合による)

・70か国から留学生を受け入れ

・総合図書館、生命科学図書館、理工学図書館、外国学図書館はサービスを継続

箕面新キャンパスと箕面市立図書館を取り入れての新しいサービスを目指す

・多様な利用者に対応したサービスの実現によりこれまでにない図書館サービスを目指す

人生100年時代の図書館を目指す

・情報通信技術リテラシー教育は地域社会の課題

 

・まちづくりの試行錯誤のなかからそれが結実したもの

箕面市は大阪のなかのベッドタウン

・図書館については積極的な取り組みをしてきた。貸出冊数は全国2位

・全小中学校に学校司書を配置し、小中学校のOPACと公立図書館のOPACを統合管理

・公立図書館で学校図書館の資料を返却可能にする試行実施

・地下鉄の延伸がきっかけ。箕面キャンパスは元大阪外国語大学

・萱野南図書館は市境にあり、新しい図書館として新駅の近隣へ移転する可能性を模索

大阪大学箕面キャンパスに打診することとなった

・地域に大阪大学があることは大きな誇りでありシビックプライドの醸成へつながる

スタンフォード大学も地元への貢献をしているが、日本の大学は多くない

・まちと大学を一体化したい

・敷地として、同じ区域内に大学と図書館と生涯学習センターがありシームレス

・上に行けば行くほど静かなフロアとする予定

・分岐点の議論、ベースは公立図書館にしたいが大学図書館の機能を満たすのであれば素晴らしい。最終的なかたちとしての大学が指定管理者になった。

大阪大学医学部とヘルスケアセンターの設置に向けて協議中

 

  • 質疑

〇総長

・地域と盆踊りを実施。世界各国の踊りを取り入れている。

・齢を重ねるごとに地域に大学があることが誇りであると言われたことが強く印象にある

 

〇岡本氏

・地域に大学があるのは大きい。若者が来る環境というのは大事。

 

Q.無料で受託することで学生へ利益を還元できるのか。

〇総長

A:大学は象牙の塔にある、壁の中にあるものから、社会とどう協働していくか地方自治体とどう連携していくのかが大事になってきた。事務方のリーダーシップは必要だが、これまで大学図書館で働いていた人々が地域に貢献していくための実践の場になっていく。そこで得た知見を伝えていくことができるのではないか。大学の価値の向上につながる、絶好の機会である、よい実験場である。2021年4月オープンの体制を整えていく必要はある。

〇市長

A:萱野南図書館はすでにあり、建物の改修は必要ないつかかかるコスト。整備費はいつかかかるもので、ランニングコスト大阪大学がだしてくださる。おそらく大学の運営を圧迫するのではないかという懸念だと思う。もし今回の話がない場合、大学図書館を別途設ける必要があるが現状よりもスペースは小さく、蔵書も少なくなるだろう。トータルコストは下がっているのではないか。双方にとってメリットがある。

〇岡本

A:コスト面ではすばらしい。

 

Q.連携の成果として、具体的にどうなると想像するか。

〇市長

A:スタンフォード大のイメージがある。行ったことはないが、職員が地域に活動の場がある。商業施設は増えるし、地域での消費活動が増えるだろう。

〇総長

A:外国語学部の学生は、これまでの阪大の学生が持っていない特性がある。講義のなかで質疑が出て、講義後も質疑がある。語学を学ぶということはコミュニケーションをとりたいということなのだと思う。前のキャンパスは普段から市民との接点をとるという点では困難な場所だったが、新しいキャンパスには市民との接点を持ちやすい環境になるだろう。言葉では表せないような、インパクトのある環境で学ぶことができることが大きな成果を期待できる。他のキャンパスにいる学生も新しいキャンパスへ行けばグローバルな環境に身を置くことができるようになるでしょう。

 

Q持続性の担保はどうしていく予定か。

〇市長

A:仕組みをつくる。大学と市でかなり協議している。スタートアップの段階で考えられる課題はお互いぶつけあうことが大事だと思う。はじめが肝心なので、そこがちゃんと機能するようになればうまくいくのではないか。

〇総長

A:生涯学習リカレント教育へのインパクトは大きい。公立図書館だけではできない、大学図書館だけではできないことがある。知のリソースを大学の中だけで閉じ込めているのが現状。インタラクションが生まれるのは図書館になるのではないか。市との連携は図書館を通じて強固にできたと思う。連携の土台ができたのではないか。いかにサスティナブルなものにしていくかというのは大きな壁があるだろう。描ける夢は互いにとって友好関係は確固たるものになったのではないか。いま、豊中、吹田とも協議している。行政上の区分けはあるものの、地面はつながっている。三つの市が大阪大学を支えると言っていただいた。今後の関係を築くための土台ができた。それに応えていきたい。

 

以上

 

red感想

指定管理料をとらないビジネスモデルは図書館以外ではよく聞くが、図書館でははじめて聞いたので大変驚いた。すぐ思いつく例でいうと、クラブチームが指定管理者となったことで、サッカースタジアムのような収益性の余地がある公共施設でビアガーデンやグッズ販売、クラブチームのイベント、クラブチームに関する展示等を行って来場者から入場料のほかイベント料を徴収することで、マイナス利益だったものをプラス利益にした例はある*1*2。ただしこの例はあくまで収益性の余地のあるサッカースタジアムだからこそ成り立った側面が強いのではと思う。

翻って公立図書館ではどうだろうか。公立図書館では入場料ほか利用料の徴収は図書館法によって禁じられている。しかし今回は既存の図書館を指定管理者へ、というのではなく建て直しを検討するなかで、駅前開発とともに大学と同一地域へ新図書館を設置、ということである。

上記を前提として図書館サービスを構成する要素について検討したい。図書館サービスを構成する要素は、人、資料、館、(利用者)の三要素(利用者を入れると四要素)である。

人材の面では、他の指定管理者と同様で、人材育成に課題は残るだろうが大阪大学の職員が公立図書館の職員として働くことを考えると、もしかしたら雇用は安定するかもしれない。ただしあくまで新たに公立図書館のために雇用される職員が大阪大学の職員であった場合に限られ、非正規雇用が主流であれば依然として課題は残る。

資料の面では、発表のなかではまだ未定でこれから協議していく、という印象を受けた。大阪大学箕面市から指定管理料を受け取らないということから、新しく購入した資料についてはおそらく大阪大学の資産となるのではないだろうか。旧図書館にあった資料については、市が購入したものについては市の資産のまま、大阪外語大学のキャンパスにあった資料は大阪大学の資産のままとなるのではないだろうか。

館の面では、指定管理者から万が一大阪大学が撤退したとして、土地と建物は市のもののため市側にはなんのデメリットもないといえる。ただし、まだまだ先のことでかなり協議中の部分が多い印象を受けた。

指定管理者制度等を導入して民間(この場合は大阪大学)に運営を委ねる場合は、官民の役割分担を明確化するよう、公共サービス基本法によって定められている。しかし、官民の役割分担と責任の明確化については、市のガイドラインで定められている場合と、協定事項として定められている場合とがある*3箕面市の運用指針(ガイドライン)には損害賠償が生じた場合や災害が生じた場合の枠組みのみ示されているため、個別に協議していくと考えられる*4